

2008年3月5日更新

マンションの間取りプランの中心、くつろぎの場といえば、リビングダイニング(LD)というのが一般的な感覚。そして、水周りの中で女性の視線が一番注がれるのは、キッチンでしょう。浴室は? といえば、どこかにスペースさえ確保されていればばいい。どうせ身体を洗う場所だから、一番目立たない場所に追いやられる・・・それが一昔前のバスルームのイメージだったのでは?
実際、以前のマンションでは、3LDKなら「1216(イチニーイチロク)」のユニットバスが通り相場でした。カラーも明るいクリーム単色など、ごくシンプル。「1216」というのはユニットバスのサイズをあらわす呼び方のひとつで、幅120cm×奥行き160cmを意味します。浴槽では、大人が膝を抱えて入るくらいのサイズです。専有面積70平米でも、せいぜい「1317」でしょう。

ところが最近のマンションでは、ユニットバスのサイズがどんどん広がる傾向にあるのです。70平米の3LDKでも「1418」が珍しくなくなりました。90平米になると「1620」が採用されるケースも増えています。技術の改良によって、設置スペースが変わらなくても、ひと回り大きいユニットを入れられるようになったこともありますが、それ以上に、住まい手のバスルームに対する意識が変わってきたのです。
限られた面積をより広く見せる工夫も取り入れられています。たとえば、横長のワイドミラーや、洗面室との境い目に透明なフィックス窓やドアをつけるなど、こもりがちなバスルームに広がりを演出するのです。

図1をご覧ください。「入浴するときに何を求めているか」という質問に対して、本来の機能である「身体を清潔に保つため」という衛生面を挙げた人は3割に満たないのに対して、「疲労回復などリフレッシュ」という答が5割近くでトップ。「くつろぎ、やすらぎなどの癒し効果」を求めている人も2割います。
家の中に居場所がないお父さんにとって、「お風呂が唯一のくつろぎの場」という声もよく聞かれます。TOTOの調査では、女性は入浴の際に「半身浴で汗をかきたい」「浴室でエクササイズやマッサージをしたい」「肌や髪の手入れをしたい」といった意識が高いという結果が出ています。

いまや、バスルームは「身も心もくつろぐリラクゼーション空間」であり、「ストレス解消の場」であり、「プライベート・リビング」として、欠かせないポジションを占めるようになっているのです。こうしたニーズを受けて、マンションにも、バスタイムを楽しむための、さまざまな機能が追加されるようになっています。
お湯張り、追い炊き、保温ができるフルオートバスはもはや当たり前。滑りにくく乾きやすい床、保温性の高いバスタブ、縁の丈が低くて出入りのしやすい低床タイプなど、基本的な機能の向上も目覚しいものがあります。

プラスアルファのアイテムも少なくありません。図2は、バスルームに欲しい設備についての調査です。1位に上がっている浴室暖房乾燥機、通称“バス乾”も、今ではほぼ標準装備といってもいいでしょう。最近は、基本的な機能にプラスアルファの要素が加わっています。たとえば、図2の4番目にも挙げられていた「ミスト機能」。たとえば、最近、採用が増えている東京ガスのミストサウナ「ミスティ」。40度前後の低温のため、高温のドライサウナのように息苦しさがなく、ゆっくり入れるのが特徴。保湿効果も高くお肌や髪に優しいので女性にとってエステ気分を味わえそう。
東京ガスの『MiSTY』。ミストサウナは、高温低湿度のドライサウナに比べて、低温高湿度のため、体への負担が少ないのが特徴。保温、保湿、発汗促進、リラックス、リフレッシュなどの効果が高い。シャワーや半身欲と組み合わせることで多様な楽しみ方ができる。(写真提供:東京ガス)
「画面もワイドになっている最近の浴室テレビ」浴室用テレビも増えてきました。画面も大きめになり、地デジにも対応しています。リラックスをして音楽を聞きたいという要望にこたえるため、バスオーディオシステムも発達。ニュースや放送中の曲名などの文字情報を見られるFM文字多重放送「見えるラジオ」を採用するなど、ユニークなアイテムも次々に登場しています。
内装カラーを3種類から選べるといったカラーセレクトは一般的ですが、最近のマンションで増えているのは、ユニットバスのセレクトシステム。ユニットバスのパネル、カウンター、床のカラーを選べるうえに、バスタブの形も2〜4タイプから選択可能なのです。

バスタブの形で一番ポピュラーなのは長方形。昔の真四角に近くて深い和風浴槽は減り、底が浅くて細長い洋風が増加。ホテルのような完全な洋風より、やや深くて長さの短い和洋折衷型が主流です。
この和洋折衷を基本に、右図のような新しいバスタブの形が続々と出てきています。
長方形のバスタブに肘掛け部分がついて少し膨らんでいるのが楕円型。片側にベンチが付いた繭型(オーバル)というバリエーションもあります。ベンチは、入るときのステップにもなるし、腰掛けて半身浴、足を乗せて全身浴をすることも可能。子どもが座って親子で入るのにも適していますから、子育てファミリーには受けているようです。
さらにベンチを手前にも付けて2つにしたデルタ型は親子3人も可能。洗い場側に幅の広いベンチを付けたシェル型は、体格の大きな人でもベンチに座ってゆったり入浴できるでしょう。シェル型はかなりワイドなので湯量も多くなるため、節水したい人には不向きかも。
どれをセレクトすればいいのかは、体型や入浴スタイルによります。自分にとって一番居心地の良い姿勢を取れるタイプを選ぶのがベストです。
『ライオンズ多摩センター 翠彩の杜』の檜風呂。同物件は、外観やエントランスに竹、格子、紅葉、玉砂利などの「和のモチーフ」を巧みに取り入れたマンション。ユニットバスの多様化は、ますます進みそうです。たとえば、和風のテイストを取り入れた新トレンドとして注目を集めているのが「ライオンズ多摩センター 翠彩の杜」(大京)。住宅設備メーカーの日立ハウステックが一戸建て向けに開発した檜風呂のユニットバスを、マンションに初めて取り入れました(有償オプション)。
ムクの木をそのまま使うと反りや変形、傷みの心配もありますが、この檜風呂は、薄くスライスした檜材を多層に重ねた、いわば集成材。特殊コーティングで防水性や耐久性を高めています。檜の風合いを生かしながら、メンテナンスの面にも配慮した優れものです。
床やカウンターには天然御影石を採用した本格派。壁面は木目調の人造大理石です。まさに“癒し”の空間としてのバスルームの新しい形といえるのではないでしょうか。
これからマンションのモデルルームを見に行くなら、リビングルームの広さやキッチンの豪華さだけでなく、バスルームにも目を向けてみてはいかがでしょうか。